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3.帰宅
——ガチャリ。
空は部屋の鍵を開けた。
「あれ? 早いじゃん、おかえり!」
お風呂から上がったばかりの凛の黒髪は、濡れて艶やかに光っている。
「ちょっと、話せる?」
空は意を決して言った。
「うん、いいよ」
私も話あるし、と凛は何だか浮き足だっている。
空は靴を脱ぎ、家に上がった。
二人は居間へと歩いていく。
「で、どうしたの?」
ソファに座った凛がそう言うと、空は覚悟を決め土下座した。
「ごめん! 凛!!」
「え。ちょっと何よ」
もしかして……浮気? と凛は目くじらを立てた。
「違う」
空は即座に否定し、説明を始めた。
「僕、安月給だろ? だから同棲してから凛を旅行に連れて行けてないこと、ずっと気掛かりだったんだ。それでつい……」
「つい?」
「よく当たると評判の宝くじ売り場で、先月の給料全部使っちゃったんだ」
凛は何も言わなかった。
「本当にごめんなさい。今後の生活費は俺の貯金から出すから許してください」
空は床に額を擦り付けた。
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