ホテルにて

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ホテルにて

 一ヶ月間お世話になるホテルに着いた華。  部屋は小さめのワンルーム。  豪華な部屋は、華が萎縮するだろうと、一番小さな部屋を用意してくれていた。  華は、部屋の中のクローゼットを見て、言葉を失った。 『え…?スーツが1着、2着…、7着もある!その横にはこの季節には使わないコート…、これも私のってこと?こっちは、ワンピース?え?これどこ着てくの?こんなオシャレなワンピース…』  たくさんの服がかかるクローゼットに困惑している華の携帯電話が鳴った。  電話に出ると、 「おお!無事に着いたか?」  と、十蔵の声が聞こえた。 「なんか…、服多いんだけど…」  華がそう呟くと、 「スーツは毎日フロントでクリーニングにだして、毎日違うスーツを着てくんじゃぞ」  そう話す十蔵。  その言葉を聞いた華は、 「…分かったけど…、他の服は…?なんか、オシャレすぎて着れないんだけど」  そう嘆く華に、 「せっかくの機会だから、理久にホテルのレストランにでも連れてってもらいなさい」 と、十蔵が答えると、 「え…、りっくん、迷惑かも…」 そう答えると、 「迷惑なもんか!嬉しくて飛び跳ねるぞ」 そう笑う十蔵に、華は笑いながらも、 『イヤイヤ、昔ならそうだったかもしれないけど、大人になったりっくんは、話しにくい…』  と、心の中で呟いていた。
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