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仲間
あっという間に月日は流れ、この会社に来るのも残り僅かになった。
華は少し寂しく思っていた。
…世の中には、こんなにいろんな仕事が溢れている。
…世の中には、こんなにいろんな人が溢れている。
この1ヶ月間の間に、正直嫌な思いもした。
女子トイレで、
「あの子、会長のコネだよね?愛人だったりして〜」
と、ヒソヒソと話している声も聞こえた。
初めは怖くて悔しくて落ち込んでしまったけれど、そんな私の様子にいち早く気付いた愛美が、普段は部内皆で社内の食堂でランチをするのに、
「今日は女子会で〜す」
と、華を会社の外のカフェに連れ出し、美咲も交えて、
「…何か言われたでしょ?」
と、華に優しく問い掛けた。
そんな2人を見て、華は泣きながらトイレでの出来事を打ち明けた。
「はぁ?むかつく!華ちゃんの事何も知らない奴がほざくな!って感じだよね!」
と、怒りマックスの愛美。
美咲は、まぁまぁと隣に座る愛美をなだめながら、正面で泣いている華に、
「華ちゃん、話してくれてありがとね。こうして、一人で抱えないことが一番難しくて勇気がいるんだよ」
そう微笑むと、
「外野はほっておくのが一番!華ちゃんの可愛らしさは、華ちゃんを大切に思う人が知っていれば十分!私らは、華ちゃんの味方だからね。ここを離れても、ずっとずっとね」
美咲のその言葉に華は涙が溢れた。
そんな華よりも号泣し始めた愛美。
「愛美!あんたが何でそんなに泣いてるのよ」
少し呆れた声で話す美咲に、
「私、昔仲間外れにあって、すごく苦しかった時があって、その時美咲先輩や華ちゃんに会いたかったぁって思ったら泣けてきちゃいましたぁ!」
と言ってワンワンと泣く愛美を、美咲と華は背中を擦り、頭を撫で、落ち着くのをしばらく待っていた。
ランチの後、華は理久に、
「足立さん…、目が真っ赤だったけど、何かあったのか?大丈夫なのか?」
と聞かれたけれど、
「大丈夫…だと思う」
としか答えられなかった華だった。
数日後、噂が流れた。
「会長が家族のように大切にしている高木さんを傷つけるデマを流す人が居たら、社長室へ案内される」
と。
「デマじゃないですよ。だって、私直接聞きましたもん。社長に」
と話す愛美だった。
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