理久

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理久

 華よりも4つ年上の理久は、小さい頃は優しいお兄ちゃんだった。  千代が亡くなった時に初めて華は出会った。  出会った頃は、 「俺の事は、にいにと呼べ」  と、妹が出来たかのように華に優しく声をかけ、公園に連れて行ってくれたり、勉強を教えてくれたりしてくれていた。    華は、そんな優しい理久の事が大好きで、会える日を心待ちにしていた。  さくらが亡くなって、月日がたち、少し気持ちが落ち着いた最近になって、 「兄妹じゃないから名前で呼べ」  と理久に突然言われた。  華は、戸惑いながらも考えて、 「…じゃあ、りくさん?」 と答えると、 「…他人行儀すぎだろ」 と答えが返ってきた。 「…りっくん?」 と、少し首を傾げながら華が呟くと、 「…それでいいや」 そう華に答えた後、十蔵に挨拶をして佐々木家から帰って行った理久。  遠ざかる理久の乗った車を見ながら、少し淋しいな…と華は思っていた。 『私のお兄ちゃん…、嫌なのかな』  ふと思った疑問が頭の中を過ぎる。  そんな少し沈む気持ちを振り切るように、華はキッチンへと向かった。
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