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十蔵の手伝い
華が高校を卒業してから、5年の月日が流れた。
高校を卒業して、会計の専門学校へと進学した華。
それは、そばで見ていた十蔵の手伝いをしたいという、その気持ちだけでの進学だった。
十蔵には、秘書がいない。
さくらがまだ生きていた頃、十蔵は、近所に秘書をしてくれそうな人は居ないし、かと言って、よそから来る人は信用しきれないから雇わないと言っていた。
その話を十蔵から聞いた華は、よそから来たさくらを雇った事を思い出し、
「…うちのお母さんは?」
と、思わず十蔵に問いかけた。
十蔵は、少し考えながら、
「さくらさんは、信じられる。何故かそう思ったし、さくらさんから頼まれた訳じゃなく、ワシが頼んだ相手だからな〜」
と笑っていた。
その言葉を聞いて、少し離れたキッチンの方に華が視線を移すと、その言葉が聞こえていたさくらも嬉しそうに微笑んでいた。
そんな昔の事を思い出しながら、今目の前で電卓と書類を見比べて悩んでいる十蔵の姿を見て、十蔵の為に何が出来るのか、華は考えていた。
そして、ある時、
「十蔵さんのお仕事の手伝いがしたいな」
そう言った華の一言で、十蔵は嬉しそうに資料の作成の手伝いをお願いするようになり、慣れてくると、社長の安田から相談されている案件に対しての意見を、華に求めたりするようになっていった。
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