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香菜の思惑
「何度言われても、ワシは嫌じゃ!」
そう怒鳴られて切られた電話。
ため息をつき、下を向いて落ち込んだ様子の香菜のそばに、淳が寄り添った。
「…今日もだめだったかぁ」
そう呟く淳に、
「ホント、父さんったら頑固なんだから…。いい加減、華ちゃんを自由にしてあげるべきよ。若いんだから、好きな所に好きな人を…。あんな田舎じゃ、仕事も恋人も選べないわ…」
そう嘆く香菜に、
「お義父さんも、華ちゃんが望むならって言ってたじゃないか」
そう言葉を返すと、
「望んでも言えるわけ無いじゃない。お世話になってて申し訳ないって思っている子に、そんな事を言えるわけ無いじゃない!」
感情的に苛立ちながら声を荒げる香菜の肩を擦り、落ち着かせるように、
「焦らず…に、な。」
そう宥める淳。
香菜は、さくらが亡くなってから、ずっと考えていた。
華にとっての幸せを。
今でも幸せだと華は言うけれど、十蔵とだけじゃなく、もっとたくさんの人と触れ合って勉強して色んな事を経験をしてほしいと、香菜は思っていた。
だから、十蔵に提案をしていた。
『華を預かりたい』
と。
何度も伝えたけれど、華を手元に置きたいのか、華の意見が消極的だからか、十蔵は頑なに断ってきていた。
『何か、少しでも違う生き方もあるんだと、華ちゃんに知ってもらう、いい方法は…』
香菜は、頭の中で、しばらくの間考えていた。
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