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地下倉庫では正午のアナウンスが聞こえない。気がつくと昼休みが終わっていることもある。そんな狐塚に時間を教えてくれるのが総務部の鯉淵だ。狐塚より少なくとも五歳は歳下の正社員で、細身で中性的な顔立ちの男性。服装が自由な職場でも目立つピンク色に染めた髪で可愛い子ぶった容姿に見えるが、実際話してみるとサッパリとした性格で好感が持てる。
身体が大きく陰鬱な性格をしている狐塚とは真逆の人物。何故部署も人格も全く違う鯉淵がこうして会いに来てくれるのか狐塚にはよくわからない。
「美味そうなカツサンドあったんですけど、食べます?」とニコニコしている鯉淵。狐塚はその眩しさに目眩がしたような気がしたが、多分寝不足のせいだ。「あ、んと、はい」と答えてカツサンドを受け取った。
鯉淵はその辺の段ボール箱に腰掛けて同じカツサンドを食べる。正社員がこんな扱いをしているのだから、やはり倉庫のものはいらないのだなと狐塚は思った。鯉淵は狐塚をチラリと見ると左耳に顔を近づけた。狐塚はドキリとした。
「インナーコンクまた広がってません?」
「あ、はい」
「かっけー。どんくらい拡張するんです?」
「えと、どうしよう。トンネルにリング通るくらい?」
「へー」
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