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さて、松山さんの次は隣の部屋の高校生、晴川くんだ。
松山さんには先に行ってていいと言ったのだけど、「え、行く途中に殺人犯に会ったらどうすんのよ」と正論で文句を言われたので、一緒に来てもらうことにした。
晴川くんの部屋に入り、食堂に集まってほしい旨を伝える。
「へえ、犯人分かったんだ。密室の謎も?すごいじゃん」
高校生のくせに一人でペンションに泊まるなどという、いかにも怪しげな晴川くんだが、案外素直に驚いてくれた。
僕は駿を褒められて嬉しくなる。
「そうなんだよ。だからね、今からその謎を解くから、皆に食堂に集まってもらいたくて……」
「あ、俺はいいです」
いい?何がいいの?
僕はポカンとした。
晴川くんはスマホを見せた。
「犯人とかトリックとかは知りたいけど、集まって聞くのもダルいからさ、ラインで教えてよ。それかZOOMか何かの動画でもいいし。そしたら皆部屋で聞けるじゃん。その方が犯人に近寄らなくていいし。それにそれを直接警察に見せれば説明二度手間しなくていいじゃん」
「そ、それは……」
何と言うナイスアイデア……。合理的すぎる……。
僕は一瞬言葉を失った。
しかし、ここで諦めるわけにはいかない。
だってそんなの、情緒が無さすぎだろ。
『犯人はあなたです』ってどこ指させばいいんだよ。
「でも、あの、やっぱり近くで聞いたほうが、いいとこもあると思うよ」
「例えば?」
例えば……分からない。だって僕にはそのトリックも分からないんだから。
「と、とにかくでも!ほら、部屋で謎解きしてたら、犯人がその間に逃げちゃうかもしれないだろ!」
僕は必死に言う。すると、晴川くんは肩をすくめた。
「え、俺はどっちかっていうと犯人の近くに行く方が嫌だなぁ」
「それを言われちゃうと……」
何も言えない。
僕が俯いてどう説得するか考えていると……。
「まあ、気持ちは分かるけどさ、話聞いてあげてもいいんじゃないの。こんなに必死なのに、可哀想じゃん」
後ろから松山さんが助け舟を出してくれた。
「皆で行けば犯人だって怖くないよ」
「そう、かなぁ」
おや、僕が必死で言っても取り付く島もない感じだったのに、松山さんが言ったら案外聞いてくれそうだ。
チラリと晴川さんを見ると、少し顔が赤くなっている。おや、もしかして晴川くんも男子高校生だし、キレイな松山さんには弱いのかもしれない。
「そうだよ!ほら、晴川くんも一緒にいこうよ。松山さんも一緒に行くんだよ」
僕は【松山さんも一緒に】を強調する。
「まあ、じゃ行ってもいいよ」
仕方ないな、という態度を見せながら、晴川くんは立ち上がってくれた。
よし!松山さんのおかげだけど晴川くんも来てくれる。
この調子でサクサクいかなくては!
僕は二人と一緒に次の部屋に向かう。
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