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「え、何で集まらなきゃいけないの」
一番初めに、キレイなお姉さん、松山さんの部屋に行った。
駿が謎が解けたので皆に集まってほしいと伝えると、とても嫌そうな顔をされた。
「警察だってもう呼ベたんでしょう。余計なことしないで、大人しくしといた方がいいんじゃないの?」
「うう、ごもっともなんですが……」
僕は、反論できずに口ごもる。しかし、ここで引き下がるわけにはいかないのだ。
「ほら、警察が来る前に、次の殺人が起こるかもしれないじゃないですか。だから、今のうちに犯人を知っておいたほうがいいですよね」
「え、犯人、そんな連続殺人犯なの」
「いや、知らないですけど」
「え、あんた知らないの?」
松山さんは呆れ顔を向ける。
そう、僕は知らないのだ。駿は僕にも犯人を教えてくれない。僕にくらい先に教えておいてくれてもいいじゃないか、と言ったことはあるけど、いつも駿はイケメンの笑顔ではぐらかしてくるのだ。くそ、そんなので騙されるのは面食い女と僕くらいだからな!!
「とにかく、私は行かないわよ。だいたい今変に集まって、犯人刺激してどうすんのよ」
きっぱりとそう言い切ると、松山さんは背を向けてしまった。
「そ、そんなぁ。お願いします……」
僕は慌てた。
「嫌よ」
「だって、でも……」
「……って、え?何あんた泣いてんの!?」
松山さんは、僕の顔を見て、ドン引きしたように言ってきた。
「いや!泣いてないです!」
僕は潤んだ目をあえて上目遣いにして首を振ってみせた。
「いや、その……ほら、泣かないでよ」
「うう……」
「ほら、もう。分かった分かった。行くから。食堂でしょ、集まるからさ。泣くんじゃないわよ」
「ありがとうございますー」
よし、松山さんはこれでオッケーだ。
僕は心の中でガッツポーズする。
僕は、駿ほどじゃないけど、どうも母性本能をくすぐる顔立ちらしい。かつて昔、可愛い女子が涙を武器にしていたように、僕もたまに、潤んだ瞳を武器にすることがある。
情けなくなんかない。
駿の為に、やれる手段はなんだってするだけだ。
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