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※※※
天才大学生、駿の推理ショーは大成功だった。
駿の推理は完璧だった。
終わった時には思わず皆スタンディングオーベーションしたくらいだった。
「いやぁ、すごいね。トリック何であんな細かいとこまでわかるの!?見てきたみたいだよね。リモートじゃあの感動は味わえなかったね」
晴川くんも感動してくれたようだ。
「動機まで完璧にわかるとか、アイツはすげえなぁ」
石丸さんも感心している。
「犯人が逆上した時、ほらヤバいじゃん!って思ったんだけど、ちゃんと犯人の行動予測して罠張ってて反撃した時とか、もうカッコいいー!ってなっちゃった!」
松山さんは目がハートだ。
ふふ、そうでしょうそうでしょう。あれが僕の友人だよ。
僕は駿が褒められて鼻高々だ。
ところで、僕はこの推理ショーで驚いた事があるのだ。
「よう、兄ちゃん。兄ちゃんのダチ、なかなかやるじゃねえか。つまらねえもん見せるんなら殺してやろうかと思ったけど、なかなか面白かったから許してやる」
権田原さんがそう言いながら僕の肩をポンと叩いてきた。
そう、まさかの権田原さんが犯人じゃなかったのだ!!
駿、紛らわしい言い方するなよ……。僕は完全に脱力してしまった。
ちょうどその時、パトカーのサイレンの音が聞こえ、がやがやと警察が入ってきた。
警察はオーナーから軽く話を聞くと、部屋の隅で縛られていた犯人をパトカーにサクサクと連れて行った。
「朋也!!」
駿が僕に近寄ってくる。
「僕はこれから、警察と一緒に現場に行って、さっきの密室についての説明をしてくるよ」
「ああ、頑張れ」
僕はそういって拳を握ってみせた。そんな僕に駿はニッコリ笑った。
「悪いね。朋也、今回人が多くて疲れただろう。いつもありがとう」
そう言って、駿は颯爽と行ってしまった。
僕はゾクゾクする。
そう!これこれ!天才の駿に、何もできない僕が感謝されるこの瞬間!承認欲求が満たされるこの瞬間のために僕はいくらでも苦労できるのだ。
それにしても今回は少し疲れたけど。
僕は駿のために、いや、僕の承認欲求の為に集めた大勢の人達を、満足げにみつめるのだった。
End
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