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完全に怯えた母子を、親父のほうがうまく誘導してくれて、勇者パーティーと俺との間にはなんの障害もなくなった。
……そして今気づいたのだが、今日はなんだか子連れの家族が多い。
こんな場所で大立ち回りなんかしたら、俺の苦労が、ここ一週間の努力が水泡に帰してしまう。
そんな葛藤を胸に勇者の後頭部を睨みつけていると、奴はめんどくさそうに振り返る。
「俺?」
「お前に決まってるだろ。今なら許すぞ。町を侮辱したことを謝るなら、許してやる」
俺にとっても、奴にとっても悪くない妥協案だと思うのだ。
戦う気満々の状態で、正直引くに引けないんだ。俺はもう、睨んじゃいなかった、縋るような目つきで転生者を見つめていた。
そしたら、また、奴は鼻で笑いやがった。
「クソ以下の町をクソ以下といってなにが悪い。というか、ヤル気なんだろ?」
シャキン――。
「みんな手を出さないでくれ。いじめになってしまうからな」
奴は剣を抜いて、やる気満々のパーティーメンバーたちの動きを抑えた。
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