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それだけ言って、勇者パーティーは走り去っていく。
俺も奴らの後を追って逃げ出したかったよ。
店に戻ったって、どうせ誰も来やしないんだから。
粗暴なおっさんが、子供といって差し支えない勇者を叩きのめした。
この構図を見た人々が、そのおっさんの店に入ると思うか?
俺は俯きながら扉に手をかけて、営業中の立て看板を睨む。
どうせ来ないんだから、今日は閉店して飲みにでも行こうかしら。
そんなことが頭をよぎるほどに、落ち込んでいた。
カランコロン――。
それでも営業は続けるしかない。
ビラを配って、大々的に宣伝したのだから、と気合を入れなおして店に入ると、背中に小さな違和感があった。
虫かと思って背中をかくと、また小さな違和感が。
「ちっ」
舌打ちをして背中に目を向けると、そこには少年が立っていた。
「はいこれ、忘れてたよ」
落ち込みすぎて、剣を道端に忘れていたらしい。
「あ、おお、ありがとな」
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