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振り返って剣を受け取ると、少年の父親と思しき男がすすっと近づいてくる。
そして、ポケットから折りたたまれた紙を取り出して、俺の前で広げた。
「これ、まだ売ってますか?」
その紙はまさしく、俺が配りまくったビラだった。
そして父親が指さす商品こそ、俺が売りたかった護身具。
「あ、ある。あります」
何が起きているのか、事態の把握ができないまま、俺は何とか返事をした。
そしたら少年が言った。
「買いに来たんだ!入ってもいいですか!」
「あ、ああ」
俺は扉を押さえて少年と父親を招き入れた。すると、父親だけが立ち止まって俺のほうに顔を近づけてきた。
「さっきのスカッとしました!」
そして親指を立てて、少年が待つ護身具コーナーへ。
彼らの背中を見て、俺はちょっとだけ安心した。
今日までの一週間が無駄にならずに済んでよかったなと。
カランコロン――。
そしたらまた客がやってきた。
さっき通りで泣いてた少女と母親だ。
「私でもその盾使えますか?」
「は?」
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