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本編
青春ソングを選択すると、明るく爽やかな曲がスピーカーから流れ始めた。赤信号で車が止まる。白色の街灯は頭を垂れて静かに道を照らしていた。辺りに車も人も無く、外には秋の夜の涼し気な空気と長閑な虫の音だけが聞こえる。嘘みたいに穏やかな時間。
どろりと眠気が頭に入ってきた。先程までは緊張感で眠れなかったのに、どこかでぷつんと切れたみたいだ。ぐらりと脳みそが揺らされる感覚に我に返る。
「寝てて良い」
運転席から聞こえた声にそちらを見る。ハンドルを握る深尾が居た。
深尾が運転する車に乗るのは久しぶりだ。最初に乗ったのは、そう。高校三年の、免許を取りたての頃だった。
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