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何時間経っても君は帰って来なくて、午前零時を回った頃に警察から連絡を貰った。赤信号で停車した君の車に居眠り運転のトラックが突っ込んで、君は生きようと頑張ったけど……。
君が遠くへ旅立ってしまってから、僕の中の時間は止まってしまった。君の鼓動が止まる瞬間を見届けたのに、君がもういないなんて信じられなかった。でも周りの時間だけは動いていく。
気が付いたら君のお葬式も四十九日も終わっていて、僕は君の両親から形見として君が最期に履いていた白いパンプスを貰った。
「ただいま」
写真の中の君に泣きながら言う。君は「おかえり」を返してくることは当然ない。ただ虚しくて、悲しくて、どこにも行き場のない感情だけが募っていく。
君と過ごすことで、君の「ただいま」を聞くことで、僕は幸せの魔法をかけてもらっていた。でもその幸せは悲しみに変わった。永遠に解けない悲しみの魔法だ。
「帰って来てよ……」
叶うことなど永遠にない願いを呟く。もう一度君の「ただいま」が聞きたいんだ……。
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