シンデレラのかけた魔法

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「ただいま」 誰もいないのに家に帰ると言ってしまう。一人で暮らすには広すぎる2LDKの部屋は、あの頃と違って散らかっている。掃除する気力なんてない。 玄関の靴置きを見ると、男もののシューズや革靴に混じって一足だけ女性ものの靴がある。真っ白な可愛らしいパンプス。君が置いていった僕からの誕生日プレゼントだ。 『わぁ〜、可愛い!大事にするね!』 付き合って二年目の誕生日にこの靴をプレゼントした時、君は花が咲いたような笑顔を見せてくれた。そしてデートに行く時は、このパンプスを履いて来てくれた。 幸せだった。あの頃は何もかもが幸せだった。 だけど、この世界は小さい頃に親に読み聞かされたおとぎ話の世界じゃない。物語の最後はハッピーエンドで「いつまでも幸せに暮らしました」なんてことはありえない。
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