軽くなりたい気持ち

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軽くなりたい気持ち

徳実(なるみ)は自宅で目の前にいる友達の文絵(ふみえ)の話を静かに聞いていた。   文絵は三ヶ月勤めている職場で悩んでいた。仕事ができずに、その事で上司から度々叱責されているという。  その叱責がくどいため、文絵の精神は追い込まれており、もう退職しようかと考えてるという。 静かに話を聞いていた徳実は口を開く。 「なるほどね、それは確かに辞めたくなるよね」 徳実は静かに言った。 「もう……疲れたよ」 文絵はため息交じりに口走る。 「来週には退職届出そうと思うんだ。会社に行くのもしんどいんだ」 「それが良いよ、今の会社が全てじゃないんだし」 徳実は重々しく言った。 文絵の話を聞く限り、徳実が文絵と同じ立場なら会社を辞めている。 甘えとか、もう少し頑張れとか簡単には言えない。  徳実はテ―ブルに並んでいる自作のフライドポテトを口に放り込んだ。  今日は文絵が相談したいので徳実の自宅に来るとのことで、手作りの料理を振る舞ったのである。    「……何かごめんね、折角の休みに暗い話なんかして」 文絵は暗い顔をして申し訳なさそうに言った。 「気にしないで、文絵が少しでも気が楽になるならいくらでも話を聞いてあげるよ」 「徳実……有難う」 文絵は薄っすらと笑った。そして好物の唐揚げを口に入れた。  「美味しい」 文絵は言った。  辛気臭い話から一転し、二人は料理を食べつつ、他愛もない会話を楽しんだ。  徳実は文絵が少し楽になったなら良かったと思った。
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