蜘蛛の巣の先にあるものは

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 私、大塚 美紀(おおつか みき)の通う中学校は、山の上にある。 山と言っても正確には丘なのだが、ここの住人は口をそろえて「山」と呼んでいる。 「『山』で暮らすって本当に大変……」  下校途中の私は、そう独りごちた。  当たり前だけどあちこち虫がたくさんいる。 この山に限らず、日本全国どこの山に行っても虫は必ずいるものだ。  山といえば、虫。  子供のころからこの山で暮らす私は、大の虫嫌いだった。  特に夏から秋にかけて出てくる蜘蛛が大嫌いだ。何と言ってもあの六本の脚が気持ち悪い。  それに、間違えて蜘蛛の巣に引っかかれば、その日の全てが台無しになるような、何とも言えない不快感が体中を這いずり回るのだ。 「ここにも蜘蛛がいる……。気持ち悪いなぁ」  木々の間に作られたその蜘蛛の巣を見て、あることを思い出した。
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