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「追い立てるつもりはないけど栞ちゃん、そろそろ帰らないと明日が辛くなるわよ。伯父さんも栞ちゃんに会えて喜んでると思うわ」
「伯母さん……。じゃあ伯父さんの顔をもう一度見て帰ります」
「ありがとう」
義父の傍に座って安らかな顔を見ていた栞さんの目から大粒の涙が。
その時、夫が栞さんの肩にそっと手を置いたのを私は見逃さなかった。
そこには小さい頃から一緒に遊んだり食事をしたりしてきた従兄妹同士に通い合う優しい愛情が溢れていた。
分かってる。栞さんは亮輔さんの従妹。
でも私の中に嫉妬の気持ちがないとは言えなかった。
「栞ちゃん車?」と義兄
「いえ、電車で駅からタクシーで来ました」
「じゃあ亮輔、駅まで送ってあげて」
「あぁ分かった。じゃあ行こうか?」
「すみません。じゃあ失礼します」
亮輔さんと栞さんは玄関から出て行った。
車のエンジンを掛ける音が聞こえて静かに走り去る。
駅まで送って行くだけの事なのに胸騒ぎがするのは何故だろう。
亮輔さんに限って大丈夫……。
私はいったい何を心配しているんだろう。
その心配は当たっていた。
駅に着くと踏み切り事故で復旧の見通しが立たない状況になっていた。
亮輔さんは義兄に携帯で
「栞ちゃんを家まで送って行くから」と。
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