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「夢」というのはとても儚い。幸せな夢は忘れるくせに、怖い夢ほどはっきりと記憶に残る。僕は今、そんな怖い「夢」の中にいる。
誕生日の朝。いつもなら母が朝一から起こしにきて、「誕生日おめでとう!」とうざったいほどに騒ぎ立てる。そんな、朝だ。だが、今日は何故か静かだ。一切の音が僕の耳に入ってこない。「お母さん」と叫んでも、一向に返事が返ってこない。自分の声すら聞こえない。ここでふと気づいた、「これは夢なんだ」と。
だが、その予想は裏切られた。何かが手に触れる感触がする。されるがままになっていると、文字を書いているようだった。その文字は、「みみがきこえないの?」だった。それに気づいたとき、どれほどの絶望を味わっただろうか。生まれつき目が見えない僕から、耳まで奪うなんて、神さまはどれほど残酷か…ああ、そっか。「これは夢なんだ」
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