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「夢の軌道修正をする。カニよ去れ!」
女の子の声がして、カニが塵になって消えていった。
エーゼ夫人は現代の姿に戻っていた。
「夢がこのようになって、申し訳ありません。
ホテルマエナの従業員のシガです。
お客様の夢を監視して、ときに修正もいたしております」
両側のツインテールを揺らしてシガが頭を下げた。
「ホテルの従業員?こんな小さな子が?」
「10才になります。極上の夢をみせる魔法をかけています」
「あなたが......」
「エーゼ様、今回の夢は決して悪夢ではありません。
もう一度よく考えてみてください。あなたの見たい夢を」
「あたしの見たい夢......」
あたしの夢、海辺に家を建てて住むこと。
生まれた街が山奥で、海が恋しかった。
一度だけ家族旅行で出かけた海が素晴らしくて、恋焦がれた。
住むなら海辺がいい。
両親が亡くなったあと、海に住もうとしたけれど、就ける職の都合で
海辺には住めなかった。
そんなときに最初の夫と出会った。
玉の輿に乗れて、この人が海に連れていってくれると信じようとした。
そして新婚旅行は海辺にしたのだ。
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