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エーゼ・ガーレは年配の貴婦人だ。
薄紫に染めた髪をアップにして、紺色のドレスを着ている。
午後に時間通りにチェックインして、支配人のセルカ―が部屋へと
荷物を運び、夫人は食堂で昼食を取った。
エーゼ夫人のリクエスト通りに海鮮のパエリヤが出された。
「油っこくなくて、おいしいパエリヤだわ」
白ワインと一緒にエーゼ夫人は満足気だった。
「光栄にございます」
白い帽子を脱いでティサナが会釈した。
昼食を取ってから、セカンドバッグひとつで観光に出かけた。
エントロピーヌ国のみどころは白い寺院で、賑やかな市場を抜けて
寺院へと向かった。
白一色で、植えられている植物さえも白い葉に白い花。
数百年前に、エントロピーヌ国が他国から爆撃を受けて街が火の海に
なったとき、真っ白な巨大な鳥が出現して大きく羽ばたいた。
すると強風が吹き、戦火をすべて消し去ったのだ。
その鳥に仕える鳥がマエナだとも言い伝えられている。
そうして名もわからぬ巨大な鳥は神として崇められ、白い壁に
銀色の腺で描かれていた。
エーゼ夫人は壁画をみつめながら、それに仕える鳥のマエナを想う。
ホテルマエナでだけ取れる羽根は、出どころは不明なのだが、正式に
マエナの羽根であることは認定されている。
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