ただいまという恐怖

　妻が大きな瞳を輝かせて俺の心臓に直接響くような冷たい声を発した。

「いいわよ。でも、残念ながら、私ほど綺麗な人とあなたが再婚できるとは思えないわ。あなたは現在、パニックになって、どうするのが最善なのかを見失っているのよ。私の言葉に従うなら間違いないわ。みんなで仲良く暮らしましょう」

　俺はとんでもない奴と結婚したのだと漸く気づいた。俺が離婚するべきかどうか悩んでいる時に、玄関に知らない男が続々と入ってきて、みんな笑顔でただいまと言っていた。

　俺は『ただいま』という言葉が怖くなった。