◇村上一颯◇

8/15
前へ
/22ページ
次へ
まず昼ごはんを食べていなかったわたし達は、評判のワゴンで長蛇の列ができているターキーレッグでも食べよう、とキャストさんに相談した。 そうしたら、なんとものの一分でそれをわたし達のところに持ってきてくれる。 パレードもショーも誰もいない特別の場所が設けられていて、最前列と同じ近さで見ることができる。 プライベートVIPツアー、最強すぎるでしょ。 日が傾き始め、この後、園は一番綺麗な時刻を迎える。夕暮れのDランドがわたしは大好きだった。  落ちてきた夕闇にDランドの灯りが融合し、あたりが幻想的な紫紺に染まる。 ほとんどの来場者がスニーカーを履いているこんな場所で、ジャケットを腕にかけた(着るのは暑くて無理らしい)健司と、ロングドレスともとれるようなフォーマルに近いワンピースを着たわたし。  シンボルのお城の前で、踊り出したい気持ちになる。 「健司、ありがとう」 「俺もびっくりだわ」  遅くに来たのにパーク内をぞんぶんに堪能したわたし達は、クラブ33に向かった。 ワールドバザールのはずれにひーっそりとある。小さい両開きのクラシックな扉の前には何も表示がない。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

253人が本棚に入れています
本棚に追加