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通りから一メートルくらい奥まった場所に扉はあり、その凹んだ白塗りの横壁に、彫金の模様を施した〝33〟というタイルが埋め込まれている。
店であることを示す文言は何もなくて、知っている人でなければ、ここが会員制レストランだとは思わないだろう。
そもそも気に止めることもなさそうな佇まいだ。
目の前はメインから外れた通常の小道で、アドベンチャーエリアへの抜け道にもなっている。
人は多い。
わたし自身、子供の頃から何度も通ったことはあったけれど、ここの存在に気づいたことはない。
健司が手順に従って暗号のようなやり取りをすると、その両開きの小さな扉は開かれた。
いかにも謎めいた雰囲気で、お城(おそらくこのパークのシンボル城のモデルになっている本物のノイシュバインシュタイン城だ)のタペストリーがかかる階段を上ると、ソファが置かれた広いレセプションホールになっている。
通りに面する一階には店が連なっているわけだから、この広いスペースは誰にも気づかれず、ひっそりと二階に存在しているのだ。
古き良きアメリカを思わせる猫足のテーブルや椅子、壁にはたくさんの額縁が飾ってある豪華な、でも照明を計算して落としたどこか秘匿性のある空間だった。
写真を撮ってもいいけれどSNSにあげる事はご遠慮下さいませ、と注意事項を告げられる。
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