◇村上一颯◇

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アンドリューは、健司があるパーティーで出会って口説き落とし、今回の学習アプリの制作を一緒にやっているゲームプロデューサーで、たぶん、わたし達とは桁違いのお金持ちだ。 大学生の時からゲーム界でいくつもの世界的大ヒットを飛ばしている。  健司はパーティーでアンドリューと同じ空間を共有できる事を知ると、人脈を通じて確実に彼との時間を持てるように根回しをし、会場でできるプレゼンの事前準備を完璧に整えてからその場に臨んだ。 でもまさか成功するとは……健司には内緒だけどわたしは超絶驚いた。 クラブ33のテーブルは大きくて、その対極にわたし達は座っているわけだ。 背後にはこのテーブル専用のキャストさんが常時、微動だにせず立っている。昨今の人手不足のレストランとは大きな違いだ。 会話を聞かれるのは恥ずかしいのか、健司は多少前のめりになって囁くようにわたしに告げる。それに応えるわたしも同じように多少前のめりになって囁きかえす。 「いつか俺が自分の力で一颯にセレブ体験、させるからな」 「今のままで充分幸せ。健司と一緒にいること以外は何も……んー、それほど多くは望んでない。掃除ロボットが壊れそうだから買って」 「ここでそういう嬉し恥ずかしいことを言うなよ。あと庶民的なことも」
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