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つまり俺がサンフランシスコから帰るのとほぼ同時に一颯は日本に帰国、仕事諸々のタイミングが見事にずれた。一颯と俺がすれ違った一日、ミケとチャピは隣のトンプソン夫妻が世話をしてくれていた。
もう二週間も一颯の顔を見ていない。半年前まではひとりで眠りにつくことなんて当たり前だったのに、だだっ広いベッドの横に一颯がいないとどうにも落ち着かない。
なぜか人間の心模様に敏感なミケとチャピが、猫用ベッドじゃなくてこっちにきてくれて一緒に寝てくれもする。
ありがたいのはありがたい。だけど、俺は一颯が恋しかった。
仕事が終わり、飯を食ってシャワーを浴び、へとへと状態でベッドに倒れ込む。そこにあるはずの俺を最大に癒す存在が……ない!
気づくと一颯がいつも使う枕を抱きしめて鼻先を埋めている。
「怖っ!」
自分の行動に自分でツッコミを入れても、一颯の呆れ果てた返事は戻ってこない。たまにミケかチャピが反応してくれるだけだ。
明日から珍しく三日間も人と会う約束が入っていない。それを越せば土曜だ。でも、強行で行くには日本はあまりにも遠く、やっぱりこのクソ忙しい時期に、ロス支社トップの俺が仕事を滞らせるわけにはいかないのだった。
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