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誰に不審に思われることなく、エレベーターでエントランスフロアに出る。キャストさんは外へのメイン扉の先を示した。
「あちらに止まっているリムジンでございます」
「え! どういうこと?」
「移動。宿泊は別の場所みたいだぞ」
ここのホテルに泊まるわけじゃないんだ。
わたし達が使ったプライベートVIPツアーは、直営ホテルのスイートルームに宿泊した人だけが購入できる特典なのだと、わたしはパウダールームに入った時にネットで調べてしまっていた。
だからてっきり今日はDランド直営ホテルに泊まるのだと思っていた。それなのにわたし達はあのパスを宿泊もせずに使えた、ということになる。
アンドリューはどこまで裏技を発揮できる富豪なんだ……。
健司と二人、人生で初めてリムジンに乗り込んだ。映画で見るほど長いリムジンじゃなかったけれど、中は広い。
運転席の後ろに革張りのソファが窓を背にして長くはべっている。ソファの前は、これまた窓側の壁に沿った作り付けのテーブルで、シャンパンが用意されている。
「アンドリュー……忙しいのに」
「いや、秘書に頼んでるだろ、さすがに」
「そうだよね」
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