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健司と話した後、わたしはたまらなくなって運転手さんに声をかけた。
「あの、どこに向かってるんですか?」
「プライベートヘリポートでございます」
「「プライベートヘリポート!」」
健司と声が見事にハモった。
さっきは庶民的なこと言うなよ、みたいに注意してきたくせに、プライベートヘリポートへの今の驚きっぷりは充分に庶民だ。
そして健司も詳細を知っているわけじゃないようだ。
「こんな夜にも飛べるんすねー。ヘリコプターって。まあそうか」
もうセレブごっこに疲れて素が出てきたらしい。イキる健司もかわいいけど、やっぱりこっちの方が彼らしい。
リムジンには十分くらいしか乗らなかった。
わたし達はプライベートヘリポートだという場所でリムジンを降りた。真っ暗だし、どこだかわからないけれど、車に乗っていた所要時間から想像するに、そう遠いわけじゃないに違いない。
細長い下草が夜風に揺れるその先は、コンクリートで固めたある程度ひらけた空間だった。
スーツに白手袋をした男性が扉を開けたヘリコプターの前で待っていてくれる。
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