◇村上一颯◇

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  健司と話した後、わたしはたまらなくなって運転手さんに声をかけた。 「あの、どこに向かってるんですか?」 「プライベートヘリポートでございます」 「「プライベートヘリポート!」」  健司と声が見事にハモった。 さっきは庶民的なこと言うなよ、みたいに注意してきたくせに、プライベートヘリポートへの今の驚きっぷりは充分に庶民だ。 そして健司も詳細を知っているわけじゃないようだ。 「こんな夜にも飛べるんすねー。ヘリコプターって。まあそうか」  もうセレブごっこに疲れて素が出てきたらしい。イキる健司もかわいいけど、やっぱりこっちの方が彼らしい。  リムジンには十分くらいしか乗らなかった。 わたし達はプライベートヘリポートだという場所でリムジンを降りた。真っ暗だし、どこだかわからないけれど、車に乗っていた所要時間から想像するに、そう遠いわけじゃないに違いない。 細長い下草が夜風に揺れるその先は、コンクリートで固めたある程度ひらけた空間だった。  スーツに白手袋をした男性が扉を開けたヘリコプターの前で待っていてくれる。
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