First Last Love 番外編 つかの間セレブハネムーン

6/7
前へ
/22ページ
次へ
「健司! どうしたのよ?」  出張によく使われるビジネスホテルのロビーで、俺に駆け寄る一颯(いぶき)の両肩を支える。 「思い出しちゃったら心配で……」 「思い出した? 何を?」 「いや、一颯(いぶき)さ、今日からか明日からか、生理じゃない?」 「え! ちょっとこんなとこで、いきなり何言い出すのよ」  一颯は周りに人がいないか確認するためか、あたりを伺うような仕草をした。 「もうきた?」  俺は声をひそめた。 「いや、まだ。今回、たぶん遅れるんだよね」 一颯も俺に近づいてきて声をひそめる。 「あっ、そうなんだ。よかったー。あ、薬、持ってきた。持ってったとは思うけど、なんならすぐ買えるのはわかってるけど、いつもの様子見てるから心配で。いろいろ手伝いもしようと」  俺は鎮痛剤を一颯(いぶき)に手渡した。 「ありがとう。仕事、すごく忙しかったでしょうに」  一颯(いぶき)は感慨深げに手の中の鎮痛剤に視線を落とし、それをしげしげと見つめた。 「仕事は飛行機の中でだいぶこなしたから」 「部屋行こう。健司、寝てなくない?」 「実家までのタクシーの中で寝た。一颯の予定は? 家の売却は? この後の予定あるなら、俺、運転しようと思って実家から車取ってきたから」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

256人が本棚に入れています
本棚に追加