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都会の喧騒から離れた海辺の町、鎌倉。
古民家を改装したカフェ「汐風」で働く、28歳の barista、藤崎あかりは、穏やかな日々を送っていた。
彼女は、コーヒーを淹れて、お客さんの笑顔を見るのが何よりの喜びだった。
しかし、あかりには少し変わった趣味があった。
それは、「恋の欠片」を集めること。
失恋した人が海に流した手紙、別れた恋人同士が最後に交換したプレゼント、叶わなかった恋の証としてのチケットの半券…
彼女は、海岸を散歩しながら、そんな「恋の欠片」を拾い集めていた。
ある日、あかりは、海岸で一冊の古いノートを見つける。
それは、誰かが書き綴った日記のようだった。
ページをめくると、そこには、切ない恋の物語が綴られていた。
日記の最後には、「このノートを、海に浮かべてください。
そして、私の想いを、誰かに届けてください」
と書かれていた。
あかりは、ノートの持ち主の願いを叶えるため、ノートを海に浮かべる。
すると、不思議なことに、ノートは光に包まれ、空へと消えていった。
数日後、カフェに一人の男性客が訪れる。
彼は、どこか寂しげな表情を浮かべ、窓際の席に座った。
あかりがコーヒーを運ぶと、男性は、彼女を見て驚いたような顔をした。
「もしかして、あなたは…」
男性は、あかりに尋ねた。
彼は、あの日記の持ち主、高木翔太だった。
彼は、ノートが海に浮かべられた後、不思議な夢を見たという。
夢の中で、彼は、あかりに似た女性にノートを渡し、想いを伝えていた。
あかりと翔太は、ノートをきっかけに、心を通わせていく。
二人は、お互いの過去や、今の気持ち、そして、未来への希望を語り合う。
あかりは、翔太との出会いが、ただの偶然ではないように感じた。
それはまるで、彼女が集めた「恋の欠片」が、二人を結びつけたかのようだった。
やがて、あかりと翔太は、惹かれ合っていく。
二人は、海辺でデートをしたり、カフェで一緒にコーヒーを飲んだり、穏やかな時間を過ごす。
そして、ついに、翔太は、あかりに告白する。
あかりは、翔太の言葉に涙を浮かべ、頷いた。
二人は、優しく抱きしめ合った。それは、新しい恋の始まりだった。
あかりは、これからも「恋の欠片」を集め続けるだろう。
それは、彼女にとって、大切な思い出であり、そして、未来への希望でもあるからだ。
そして、いつかまた、誰かの想いが詰まった「恋の欠片」が、誰かの心を癒し、新たな恋を芽生えさせるかもしれない。
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