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「よしっ! 完成したわ……!」
私──ロレッタは出来上がったアイシングクッキーを見て頷いた。星や虹など形も様々で、彩りも鮮やかで可愛くできたと思う。
アイシングのクリームがちゃんと乾いたかを確かめた後、袋に詰めてリボンできゅっと結ぶ。それから、クッキーの袋詰めを魔法薬がこれでもかと並ぶ棚の一番端っこに置いていく。
冒険ギルドの三軒隣にある魔法薬屋『星降る薬亭』で私は売り子として働いている。魔法薬は体力回復や魔力回復によく効き、傷口にかければあっという間に傷を治してしまう。
星降る薬亭の魔法薬はとても効果が高いと評判で、魔法薬を作るのに集中したいからと売り子の求人がでていたのを見つけて応募した。三姉妹の魔女も本当にいい人ばかりで、私のアイシングクッキーも置かせてもらっている。
きっかけは、冒険ギルドから大量の魔法薬の依頼──徹夜で魔法薬を作り続ける魔女のみなさんにアイシングクッキーを差し入れしたこと。
「あら、ロレッタ。これおまじないクッキーになってるわよ」
「どれどれ? あらまあ、本当。どんな効果があるのかしら……うふふ、これは雨上がりに虹が見える効果だわ」
「えっと、これは──朝スッキリ起きられる効果ね」
徹夜のハイテンションだった魔女のみなさんは、おまじないクッキーをあれよあれよと販売することに決めていた。でも、きっと本当は、アイシングクッキーのお店を持つことが夢の私を応援してくれたのだと思う。
大好きな魔女のみなさんのためにも、今日も魔法薬を沢山売るぞ、と気合を入れた。
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