12人が本棚に入れています
本棚に追加
手を引かれたまま響の家に連れてこられた。
「今日は親が遅くに帰ってくるから、今は誰もいないよ」
「あー、そうなの? おじゃまします」
俺だけだから気を遣わなくて良いよ、という意味だと思っていた。響の部屋に入ってすぐにベッドに押し倒される。俺は響の言葉をどうやら読み誤っていたらしい。
「ちょっと待って! 俺から離れて」
覆い被さって見下ろしてくる響の体を押す。
「何で? 告白オッケーもらって、誰もいない家についてきてるんだから、千晶もその気なんだと思ってたんだけど」
「いや、俺、この家に誰もいないって知ったの、家に着いてからなんだけど」
それより告白って本当にドッキリじゃなかったってこと? それなら何であんなにギャラリーがいるんだよ。
「人が隠れてるの知ってたから、ドッキリや罰ゲームで告白してると思ったんだよ」
「そんなことするわけないじゃん」
「じゃあ何で人前で告白してきたんだよ」
「今日女子に告白されて、好きな人がいるって断ったら相手を言うまで離さない! って腕を掴まれて怖くて……。千晶のことが好きだって言ったら、告白して付き合ったら諦めるって言われて。そしたら何故か人数集められてあんな感じになってた」
モテて羨ましいと思っていたけど、イケメンも大変なんだな。押しの強い女子は俺も怖い。群れるともっと怖い。
「響の言い分は分かった。とりあえず座って話そう。俺の話も聞いて」
「分かった。何?」
腕を引いて起き上がらせてくれる。ベッドを降りようとしたら腰に腕が回された。
「離して。座って話そうって言ったでしょ」
「ここで座ってるじゃん」
話し合いをする距離じゃない。身体はピッタリと密着しているし、顔はぼやけてしまうほど近い。なんなら鼻先は微かに触れている。
顔だけは押しのけて距離を取らせた。
「響、俺と別れてほしい」
「……は? 何で?」
いとも簡単に再び組み敷かれた。密着してベッドの上にいるのだから、少し押されれば背中がベッドに沈む。
俺を見下ろす響の悲痛な表情に胸が痛んだが、俺は響の事を友達だとしか思っていない。
最初のコメントを投稿しよう!