別れられない

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 手を引かれたまま響の家に連れてこられた。 「今日は親が遅くに帰ってくるから、今は誰もいないよ」 「あー、そうなの? おじゃまします」  俺だけだから気を遣わなくて良いよ、という意味だと思っていた。響の部屋に入ってすぐにベッドに押し倒される。俺は響の言葉をどうやら読み誤っていたらしい。 「ちょっと待って! 俺から離れて」  覆い被さって見下ろしてくる響の体を押す。 「何で? 告白オッケーもらって、誰もいない家についてきてるんだから、千晶もその気なんだと思ってたんだけど」 「いや、俺、この家に誰もいないって知ったの、家に着いてからなんだけど」  それより告白って本当にドッキリじゃなかったってこと? それなら何であんなにギャラリーがいるんだよ。 「人が隠れてるの知ってたから、ドッキリや罰ゲームで告白してると思ったんだよ」 「そんなことするわけないじゃん」 「じゃあ何で人前で告白してきたんだよ」 「今日女子に告白されて、好きな人がいるって断ったら相手を言うまで離さない! って腕を掴まれて怖くて……。千晶のことが好きだって言ったら、告白して付き合ったら諦めるって言われて。そしたら何故か人数集められてあんな感じになってた」  モテて羨ましいと思っていたけど、イケメンも大変なんだな。押しの強い女子は俺も怖い。群れるともっと怖い。 「響の言い分は分かった。とりあえず座って話そう。俺の話も聞いて」 「分かった。何?」  腕を引いて起き上がらせてくれる。ベッドを降りようとしたら腰に腕が回された。 「離して。座って話そうって言ったでしょ」 「ここで座ってるじゃん」  話し合いをする距離じゃない。身体はピッタリと密着しているし、顔はぼやけてしまうほど近い。なんなら鼻先は微かに触れている。  顔だけは押しのけて距離を取らせた。 「響、俺と別れてほしい」 「……は? 何で?」  いとも簡単に再び組み敷かれた。密着してベッドの上にいるのだから、少し押されれば背中がベッドに沈む。  俺を見下ろす響の悲痛な表情に胸が痛んだが、俺は響の事を友達だとしか思っていない。
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