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彼に急に射すくめられて、私は言葉に窮してしまう。
「いきなり言われても……思いつかないよ……」
鼓動が速くなる。じんと耳の内側が熱くなって、呼吸の仕方を忘れそうになる。
何気ない会話の中での真剣な質問。
「でも……いっしょにいたい……かな……」
薄暗い静寂の中、私の声が天体ドームで静かに木霊する。
「……ありがとう……俺もだよ……」
瞳を閉じて、私の言葉を噛みしめるようにして聞いていた恭介は、私を優しく抱きよせてそっとつぶやいた。
天体ドームを閉じて、二つある寝袋をジッパーで繋ぎ合せると私達は体をそれに滑り込ませた。
一つになった寝袋はどこに手を伸ばしても恭介の身体にぶつかる。静寂が降りつむまま、肌が触れ合う恭介の存在を温もりとして感じながら、首を傾けて見つめ合う。
静寂が、天体ドームで、ふくらむ。
唇が重なる。恭介の瞳に私が映る。寝袋ごと恭介が私の上になり唇を離すと、優しく私に告げた。
「明日、楽しみにしていて」
「明日?」
「そう、明日」
「何? 何かあったっけ?」
「未来にいこう」
「えっ」
「宇宙船に乗れるかもしれない」
そう言って優しく微笑むと、私の耳朶を口に含んだ。
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