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3.
店内は賑わうお客さん達の声やジュ〜ジュ〜と生地を焼く音に食欲そそる香ばしい匂いがふわっと漂っている。
ヤス子と別れた後、夕飯を食べにこの店に立ち寄った禄助は、仕切りカーテンの付いた個室で熱々のお好み焼きを上品に食べている昴を見てため息ついた。
「外に居る時くらい坊ちゃんやめたら?」
昴はでかい病院の院長の一人息子なのだ。
「坊ちゃんなんで仕方ないでしょう?身に付いた癖です。自分で今更どうにも出来ませんよ」
禄助の隣に座っていた李兎が ふっ と笑った。
半熟の目玉焼きの黄身が破れたのを甘ったるいソースと絡めて焼き立てのお好み焼きと一緒に口いっぱいに頬張った禄助は「熱っつ!」と顔を赤くして両頬を両手でぱんぱんと叩いた。
「そんな一気に食べるからだぞ」
李兎は困ったように笑って言うと熱々の鉄板の上にジュワ〜っと生地を広げた。
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