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『あの下、見える?…あっ、落ちないように気をつけてね』
ヤス子はすぐ横にあった崖の下を指差した。
禄助は足元を気にしながらゆっくり覗くと そこは急な坂になっていてもっと下の方には川が流れているのが見えた。
ヤス子は花束を置いた木の太い枝に手すり代わりに掴まって崖の下を眺めながら『白沢さんね、こっから落ちたんだよ』と言った。
『白沢さんの死はね、誰のせいにも出来ないんだ。……ううん、違うか。絶対的に公平な判断がくだせる審判員か、完璧完全な正義のヒーローが現れてくれないかぎり誰のせいにも出来ないの。…………って、あはは…何言ってるか分からないよね、私…』
禄助は黙ってヤス子を見た。
『暗くなって来ちゃったねぇ』
ヤス子は薄暗くなってきた空を見上げて言うと木から離れて元来た道を戻り出した。禄助はまた静かに後ろをついてった。
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