萩野禄助の事件記録〜episode 0〜

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『あれだけ向けられていた注目の目があっという間に白沢さんに向いた。寺本達の存在は薄れてって誰も見向きもしなくなって、追い討ちをかけるみたいに実力の差で白沢さんにボロ負けしてレギュラーから外された。ベンチから白沢さんを見る3人の目は他人から見ても本当に怖かったのを今でも覚えてる…。 どれだけ頑張ってもどうしてもあと一歩がどうしても届かなくて いつからか寺本達は白沢さんを虐めるようになった。 後輩なんだから先輩の分買って来いって…それもだいぶ酷いんだけどさ、そこから始まった虐めはだんだんエスカレートしてって ついには白沢さんを呼び出して“調子乗んな”とか色々文句言ったりしてたみたい』 『お前止めなかったのか?』 『何回も止めたわよ!寺本達に“やめろよ”って何回言ったか覚えきれないほど注意したし、それでたまに掴み合いの喧嘩になったりした事だってあった!だけどあいつらはやめなかった…かと言う白沢さんの方は負けず嫌いだから学校来なくなったり部活休んだりなんて事は絶対しなかった。それが余計に寺本達は面白くなかったみたいでさ、ついにやっちまったんだよ』 『何を?』と禄助が聞き返した。 ヤス子は森を出て少し歩いたところまで来ると『あれだよ』と言った。ヤス子が指差したのは車でも登るのが大変そうな急な坂道だった。 『萩野君には あの坂道が何に見える?』 『ただの坂道』 ヤス子は笑った。
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