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『真面目でストイックな白沢さんは本当に1人でこの坂に来て、嘘だって事を知らずに汗だくになりながら登ったり下ったり繰り返してたんだって。寺本達は白沢さんがどっか怪我でもすれば良いと思って本の思いつきであんな嘘ついたみたいだけど。
……でも、大変なのはこれから。白沢さんがこの山に来た日、めちゃくちゃ運が悪くてね 走り込みしてる最中に野生の熊に遭遇しちゃったんだ』
『く、熊…?』禄助の顔色が一気に冷めた。
『うん、本当。ほらここ森だらけだからさ熊に注意って看板だって立ってるじゃん』
言われてから今更側に熊のシルエットが描かれたデカい看板の存在に気付いた禄助は自分の身体からサー…っと血の気が引いていくのを感じた。
さすがの禄助も熊は怖いからだ。
『白沢さんも気をつけては居たみたいなんだけど、まさか本当に出くわすとは思ってなかったみたいで“やばい!どうしよう!?”って考えてる間に熊の方が追いかけて来たもんだから白沢さんは必死で逃げたんだって。もうどこを走っているかも分からないとこまで来た時、足を滑らせて崖の下に落ちちゃったの。それがさっき私が花束を置いた場所。激しく転落したせいで右腕はその時にもげちゃったらしくてね』
『でも廊下で聞いた話しだと白沢は自宅で亡くなったって…』
『そうだよ?』
『どう言う事だ?』
禄助はヤス子に聞き返した。
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