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『落ちた時ね まだ白沢さん生きてたの』とヤス子は答えた。禄助は驚いた。
『何としてもこっから這い上がって生きなきゃって思って片腕しかないのに崖を登って今私達が居るこの道路まで這って歩いて来たの。それで偶然通りかかったタクシーに乗せてもらって家まで帰ったんだけど、それからその後ずっと白沢さんの様子がおかしかったって』
『あんな目にあったから?』
『うん、それもあると思う。カノちゃんが言う通り最初は皆…あ、家族の人達の事ね。皆、熊に襲われたのがよっぽど恐ろしかったんだろうって思って白沢さんが落ち着くまで そっとしといたらしかったんだけど、
後から白沢さんのお母さんに聞いたらさそれだけじゃなかったって言ってた』
『……何があった?』
ヤス子は小さく息を吐いた。それから今出て来たばかりの森の方を振り返った。
『白沢さん、落ちた時に見ちゃったんだって』
『何を?』
禄助はヤス子を見た。
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