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「部長と何話してたんですか?」
一緒に体育館に戻りながらふと中野は思い出したように佐藤を見て尋ねた。中野もまたヤス子と似て高身長なので佐藤は少し顔を上げた。
「…ちょっと、ね」
「?…あっ!すいません、私なんかまずい事聞いちゃいました?」
「ううんっ、そんな事ないよ?むしろ…」
まずい事聞いたのは私達の方…かも。佐藤は禄助を見た。禄助は鼻歌を歌ってて何考えてんだか分からない。
ちょっとロクちゃんも何とか言ってよ!と佐藤は心の中で文句言った。
「むしろ…なんです?」
「えっ?あ、……。あ〜のさ、中野さんって白沢さんって人の事知ってたりする、かな?」
「あっ、2年生の先輩の事ですか?…亡くなったって言ってた…」
「う、うん」佐藤は頷いた。
「私1年生だから正直何があったかさっぱり分からないんですけど、白沢先輩と同じクラスだったうちのお姉ちゃんが言うには自殺したみたいだって言ってましたね。あと…本当か分からないですけど、白沢先輩の遺体を白沢先輩のお父さんとお母さんが見つけた時、どっちかの腕が無かったとかなんとかって…」
「えっ!?」佐藤は驚いた。禄助は別に驚きもしないで中野の方を振り向いて見た。
「どうして?」すかさず聞き返すと「さぁ、何でですかねぇ?」と中野は悩ましげに頭をひねった。
「でも、あくまで噂なんで、お姉ちゃんが仕入れた話しも本当か分かんないですよ?」
「ノノちゃん!」とそこへ話し終えたヤス子が戻って来た。
ヤス子は中野を見ると「来週の試合、あんた出る事決まったからね!」と中野の背中を叩いて言った。「本当ですかっ!?やったー!」と中野は嬉しそうに万歳した。
そしてその瞬間、中野が持っていたドリンクボトルは盛大に床に転がり落ちたのだった。
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