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「あ、ああ、言ったな。……ちなみに、そのお願いっていうのは〝ソレ〟とは関係ないよな?」
膨れ上がったズボンに視線をやりながら、恐る恐る訊く。
下半身の膨らみも、さっきから全身を舐め回すような視線も、どうかその願いとは無関係でありますように……! と切に願うシリル。
しかし、神は残酷だった。
「ふふっ、さすが僕のシリル。賢いね。その通り、僕の願いに関係大アリだ」
「ぎゃぁぁぁ!」
言葉にせずとも答えが分かったシリルは、半狂乱で叫んだ。
「こ、こここ、この変態ッ! 動物をなんて目で見てんだ!」
「何を言ってるの? シリルは今、人間の姿じゃない。まぁ、もっともシリルのことを動物だなんて思ったことは一度もないけどね」
「なにとんでもない告白してくれてんだ!」
どうやら猫の可愛さで人類滅亡を願う心の闇は癒やせたが、代わりにとんでもない新たな心の闇を生んでしまったようだ。
「や、やだやだ! 絶対に無理! というかそんな大きいのが俺の中にはいるわけないじゃん!」
「ふふふ。そんな大きいの入らない……なんて誘ってるみたいだね」
「なんでそうなる! 普通に考えて全力の拒否だろうが!」
うっとりと目を細めるギディオンに半泣きで訴えるが、全く話が通じない。
「まぁでも、いくら拒否してもだめだけどね。だって僕らは魔術師と使い魔。僕の命令は絶対だ」
そう言ってシリルの胸元に手をかざすと、鎖骨下に契約紋が光を帯びて浮かび上がった。
(い、嫌な予感しかしない……!)
シリルはゴクリと唾を飲み込んだ。
「使い魔シリル・モーラン、契約の名のもとに命ずる。――自ら脚を開き我が欲望を受け入れろ」
「うわぁぁぁ! 格調高く何とんでもない命令してんだ!」
しかしどんなに叫ぼうとも、使い魔のシリルが主であるギディオンに逆らえるはずもなかった。
両膝の裏を抱えて、ギディオンの命令通りに股を開く。
「い、いやだっ、見るな……っ」
命令に抗い脚を閉じようとするが、全く体が言うことをきかない。
今までギディオンがシリルに強制命令を使ったことなど一度もなかったのですっかり忘れていたが、使い魔は主に絶対服従なのだ。
そんな当たり前のことを改めて痛感して、シリルはぶるりと背中を震わせた。
「ふふっ、恥ずかしがることないのに。いつも仰向けになって誘うように見せつけていたじゃない」
「あれは腹を見せていただけだ!」
うっとりととんでもないことを言うギディオンに、思わず声を荒らげた。
猫が腹を見せるのは信頼の証しであり、これをされた人間はその無防備な可愛さと健気さにもう虜になるしか他ない。
だからあれはギディオンの心の闇を癒やすための行為であり、断じて性的な意味は微塵もないのだ。
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