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同じ男の、しかし自分より遥かに大きいもので無遠慮に秘部を擦りつけられる恐怖と屈辱に体がすくむ。
しかし一方で、猫となってからは無縁だった他者から与えられる快感に、自分の意思とは関係なしにシリルのものも固くなってきた。
「ははっ、シリルも気持ちいいの?」
触れてほしくない事実に躊躇いもなく、からかいの声で踏み込まれ頬がカッと赤くなる。
「ち、ちがう! そんなわけあるか!」
否定するが、強がりであることは明白であり、ギディオンは笑みを深めた。
「嬉しいなぁ。いい兆候だ。……自分より大きなオスに屈服するのは可愛いメスになる始めの第一歩だからね」
耳元で嬲るように囁かれ、頬が羞恥の熱に燃えた。
「う、うるさいっ、気持ち悪いこと言うな! 第一、誰でも――」
こんなことをされたらこうなるに決まっている、という弁解はギディオンによって遮られた。
「誰でも?」
嬉々とした声から一変、冷たい声が落ちてきて、言葉が逃げるように喉の奥に引っ込んだ。
それを逃がすまいとするかのように、右手で喉をガッと掴まれる。
決して締め上げられることはなかったが、あと少しでもギディオンの機嫌を損なえばその手に力が込められることは容易に想像できた。
そんな不穏な気配が、首を掴む手や、こちらを見下ろす冷たい目にありありと感じられた。
「……こんなこと、他の男とやったら絶対に許さないよ」
怒気を孕んだ冷淡な声でギディオンが言う。
どうやら『誰でも』という言葉だけで勝手に変な勘違いをしたようだ。
とんだ勘違いだと突っ込みたいところだが、目から発せられる尋常でない圧力がそれを許さない。
しかもこれが魔術などによるものでないから、本当に恐ろしい。
「この先ずっと死ぬまでシリルがえっちなことするのは僕とだけだ。……分かった?」
幼子に言い聞かせるような優しく甘い声だが、威圧的な冷ややかさは隠せていない。
強制命令されているわけでもないのに、気づけばコクコクと頷いていた。
そんなシリルに、ギディオンは物騒な雰囲気を霧散させ、にこりと微笑んだ。
「さすがシリルは賢いね。いい子、いい子」
首から手を離すと、その手でシリルの頭を優しく撫でた。
手は使えないが、頭を動かしてギディオンの手から逃れるくらいの抵抗はできるのに、恐怖で体が固まって、されるがままだ。
ギディオンは心ゆくまで撫でると、頭から顔の輪郭をするりと伝って、シリルの顎を軽く掴んだ。
「賢いシリルなら、すぐにメス猫のイキ方も覚えられるよ」
卑猥な愉悦を目にたぎらせて、ギディオンが目を細める。それは獲物を捕らえた猫のような瞳で、尻尾の生えたシリルより余ほど獣に近いものだった。
シリルはさながら追い詰められたネズミであり、ゴクリと唾を飲み込むことしかできなかった……。
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