喫茶なまくび

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 首里がよたよたと窓際に近付き、ブラインドを閉めた。 「ねえ、気付かれたかな?」  ブラインドの外に、殺人鬼が立っている。 「すみませーん! 誰かいませんかー?」  ドアの向こう側から叩く音が響いた。 「あの声に聞き覚えは?」 「もう少し、ハスキーな声だった様な気が」  山下が声をひそめる。 「車が故障しちゃったんですよー。誰かいませんかあ?」  男が、ドアを叩く。 「お父さん!」  首里が半泣きで受話器を持った。  今度こそ、通報しようと思った瞬間、島田が私の手首を掴んだ。 「何する……え?」 「犯人、捕まったみたいです。それに、男性の遺体も発見されたみたいです」 「見せて下さい」  山下にも見える様にスマートフォンの画面を差し出した。 「……こいつ、加藤です。そっか、捕まったんだ……」  山下が安堵した様にため息をついた。 「良かったですね、山下さん」  スマートフォンから目を離すと同時に、山下の胴体にヒビが入り、音を立てて崩れた。 「えっ、ええええ」 「うわあああ」  皆の叫び声に、外の人影もびっくりした様に悲鳴を上げた。 「山下さん、お地蔵さんだったの?」  首里が呆けた様に地蔵の顔を見た。
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