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「いや、ナンパ目的で一人で釣りをしている女性に声をかけまくっている男がいるって聞いたことあるが……。俺達が聞いたのは鈴木だか高村だか、色々だよな? おい、しっかりしろ」
窪田に同意を求められた小杉がギクリと身体を震わせた。
「ちらっとだが見かけたことがあったと思い出したんだ」
手拭いで額の汗を拭く小杉の手は小さく震えていた。無理もない。私だって立場が逆ならとっくにこの場を逃げ出していたかもしれない。この場を去ろうとしない彼らの存在がとても心強かった。
「水のおかわりいりますか?」
小杉が水を一気飲みして、
「……名前を偽るなんてろくな人間じゃないと思ってたんだが、そいつが犯人なのか?」と言った。
「まさか殺人目的だなんて思わないよなあ」
「アイツが、殺人犯の加藤?」
首里が空中を睨みつけたまま呟いた。
「首里も知ってるのか? まさか、声をかけられたのか?!」
「ううん。私は会ってないよ。ただ、二週間前くらいから、店の前をウロウロしている男の人がいて、ちょっと気味が悪いなって思ってたの」
「何で言わないんだ!」
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