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「ごめん。でも、誰かと携帯で喋ってたし、釣り道具を持ってたから、待ち合わせの相手を探していたのかなって」
「そうか……」
前の店舗情報を見て、喫茶店と数メートルしか離れていない釣り道具のレンタル屋と間違って来る人もたまにいる。
「でも、今後はどんなことでも言いなさい」
「はーい」
高校生になったばかりの首里にはもう少し警戒心を持って欲しい。
「人に親切にするのは良いが、警戒心を持つのは大事だからな」
「ーー僕ももっと注意深く相手を見ていたらこんなことにならなかったですよね」
「えっ、いや……」
生首を前にして気まずい空気が流れた。
「マスター、悪いけど珈琲二つ貰える?」
窪田が場違いなほど明るい声で言った。
「僕が言うのはなんですが、皆さん肝が座ってますねえ」
生首が目をぱちくりした。
「気付け薬代わりに濃いやつをさ」
「分かりました」
窪田と小杉に追いやられ、しぶしぶ珈琲を淹れるために湯を沸かす。
「首里ちゃん、その男はどんなやつだった?」
「首にホクロなかった?」
首里が眉間に皺を寄せ考え込む素振りをした。
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