*十五

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*十五

 昨日からのトラブル続きでよれよれになってしまったシャツは、あっさりと脱がされて僕はたちまちに下着だけの姿になった。  同時に千弥は自ら服を脱ぎ捨てて肌を露わにし、僕の上を覆うように手をついて見おろしてくる。千弥の下から期待を込めて見上げる僕の姿が彼の濡れた目に映し出されている。  たっぷりと数十秒互いを探るように見つめ合ったのち、僕らは引き合うように唇を重ねた。 「ん、ッふ……んぅ、あ、っはぁ」 「っは、あ、ン……」  口中で絡ませ合う舌は互いの鋭い犬歯で傷がついてじんわりと血の味が広がる。口付け合いながら味わう相手の血液の味は充分すぎるほど煽情的で、嫌が上でも興奮が高まっていく。  千弥の手が僕の肌を滑り、胸元を中心に舐めるように撫でまわしながら輪郭をなぞる。体温がないはずの肌なのに触れられているところはとろけるように熱い。 「あ、ン……っは、ンぅ……千弥ぁ」 「零、肌が雪みたいなのに触ると少し赤くなるね……俺を感じてくれてるの?」  嬉しい、と囁いて千弥の舌が僕の耳を(なぶ)る。濡れた音が脳に響いてぞくぞくするほど気持ちがいい。  もっと、とねだるように身悶えすると、舌は外耳をなぞって穴に挿し込まれる。 「っはぁん! あ、んぅ!」 「耳、好き? いっぱいして気持ち善くあげる」 「っや、あ、んぅ!」  舌が触れていない耳元には指先が触れ、やさしいのにいやらしい手つきで乱していく。  左右の耳をまんべんなく愛撫した千弥は、そこからすぅっと舌を這わせて首筋をなぞり、小さく存在を誇示する胸元を()む。最初は甘く、僕がわずかに感じて震えた途端にきりっとした傷みが走るほどに歯を立てられた。 「ッあ、んぅ!」 「ちょっと痛くするの好きなんだね……ここからいっぱい出てる」  甘い痛みに反応した僕の下腹部に千弥が触れて握りしめてくる。先端からは快感を覚えた証のように先走りの蜜がこぼれていて指先でそれを塗りつけるように弄られる。 「あ、あ、ん、っは、あぁ」 「零がかわいいから、俺のもこんなになっちゃったよ」  僕の手を取って千弥のそこに宛がわれると、体温がないはずのそこがたしかに熱く硬くなっている。触れた熱からは千弥の変えられてしまった彼の(せい)が感じられて、一層彼が愛しくなった。  ああ、千弥が僕を求めてくれている……もう体温をまとう人間ではないけれど、ちゃんと僕を想って熱くなっている……それがたまらなく嬉しくて、涙が滲んだ。  より一層生きている彼を愛したくて、僕は触れた熱をぎこちなく扱き始めた。握りしめた熱は段々と硬さと大きさを増して千弥の呼吸も浅く速くなっていく。 「ッあ、ッは……零……気持ち、い……」 「千弥、僕、感じて……」 「俺も、気持ちよくしてあげるね」  微笑んだ千弥の手がぎゅっと僕の屹立(きつりつ)を握りしめて同じく扱き始める。すでに先走りにまみれているそこはすぐに濡れた音を立て始めた。  互いの熱い屹立を扱き合いながらキスを交わすと、その感度はより一層上がっていく。上も下も触れ合い絡ませた感触に脳の感覚が攪拌されていくのだ。 「っは、っはぁ、ああぁ、千弥ぁ……ダメ、あ、出る、出ちゃうぅ!」 「っあぁ、俺も、出る……!」  高まっていく快感が同時にお互いの手の中に吐き出されてあふれた。白濁を脈打ちながらこぼしても尚、僕も千弥もまだ熱いままだ。  手を汚した白濁を、千弥は「……血より、甘そう」とくすりと妖艶に笑いながらためらいなく口に含む。  千弥に倣うように僕も指先に絡む彼の白濁を舐めてみる。確かに血よりも甘い気がした。  指先を舐めてきれいにしてからもう一度僕らはキスをして、また熱を吹き返した屹立を感じる。  吸血鬼は体温がなくて死んでいるようなものだと思っていたのに、吸血された相手も死んでしまうものだと思っていたのに、僕らはいま互いの熱の気配を感じて見つめ合っている。僕はそれがたまらなく嬉しく、より特別な感情を覚えた。 「千弥」 「うん?」 「僕、千弥と同じだって感じたい。だから、僕に千弥の熱を注いで」 「零……」 「愛してるから、千弥が欲しい。千弥の全部をちょうだい」  千弥の血を見るたびに、触れられるたびにずっと感じていた疼きの正体が何であるかがいまわかった。僕はずっと千弥が愛しくて、欲しくて、刻み込むために本能が彼の熱を求めていたんだ。 自分が嫌いで、消えてしまいたくて、死んでいるように生きてきた僕を愛してくれてきた彼とひとつになればいい。千弥がいてくれるなら、それだけしかいらないから。 真っすぐに射貫くように彼を見上げながらそう告げた僕を、千弥は昂る感情に震えながら強く抱きしめてきた。涙混じりの吐息で僕を呼び、丁寧に髪と肌を撫でてくれる。 「俺も、零が欲しい。俺の全部を、零にあげたい」 「千弥……」  名前を口にした声さえも千弥から重ねられた唇に呑み込まれていく。舌を挿し込んで絡ませ、激しく互いの口中をかき乱し傷つけて流れた血を吸い合う。  僕の指先が千弥の屹立に触れて輪郭をなぞると、千弥は僕の屹立の奥で彼を求めて震える秘所に指先を這わせた。  先程吐き出した白濁を指先に絡め、千弥は触れた秘所のナカへと入り込んでくる。覚えたことのない異物感と圧迫感に僕が思わず千弥の舌に噛みつくと更に血が口中に広がった。  舌先に感じる千弥の血液は、彼が不安定な僕を慰める時ようにやさしく昂った僕をなだめていく。異物感も圧迫感も次第にやわらぎ快感へと変わっていった。 「あ、ん、んぅ、っは、あぁ」  指がナカを探りながら強張る肉体をほぐしていく。ゆっくりと緩んでいく僕を、千弥はキスの雨を降らせて喜んでくれる。  挿し込まれた指がナカのある個所に触れると、電流のように快感が走って僕は跳ねるように反応した。 「……ここ、いいんだね、零」  囁きながら千弥がナカの指を増やし、反応した場所をより攻めるように(まさぐ)ってきた。触れられるたびに身体が反応して屹立からは更に蜜がよだれのように滴る。  滴るそれを千弥はからめとりつつ屹立をまた扱き始めた。ナカと合わせて与えられる快感に僕は悲鳴じみた嬌声をあげる。 「あぁう! っや、あぁ! 両方、ッダメぇ! あぁ!」 「ナカ、すごく指に喰いついてるよ、零。前も後ろも(いじ)られて気持ちいい?」 「イイ、すごく、あ、っはぁう!」 「あぁ、また締まった……かわいいね、零」  吐息交じりに言われた瞬間、ひときわ大きな快感の波が僕を襲い、また僕は白濁を吐き出していた。それでも、熱は治まる気配がない。  どろどろに手に絡みついたそれを千弥は指を引き抜いた秘所に再び宛がい掻きまわすような音を立て始めた。卑猥な音に聴覚までもほだされ、反応するように屹立が震える。 「千、弥ぁ……ナカ、欲し……」  息を荒く乱して絶え絶えに乞うと、千弥はゆったりと微笑んでうなずいて僕の白濁にまみれた秘所に千弥の屹立を宛がった。そしてためらうことなく僕を挿し抜いたのだ。  さっき感じていた指よりもはるかな圧迫感に一瞬呼吸が止まる。千弥もまた、僕に挿入したままジッと動かなかった。 「ッあぁ……すっごい、零のナカ、きゅうきゅうしてる……」 「っは、あ、かはッ……千、弥……」 「零、苦しくない? 痛くない?」  言葉で応えられる余裕がなく首を横に振るばかりの僕を、千弥がやさしく撫でながら抱きしめてくれる。ゆっくりと息は整っていくけれど、ナカに覚える圧迫感は(やわ)らがない。  少しの間千弥は何か考えるような顔をして、そしてこう言った。 「零、俺のここ、嚙んでいいよ」 「えッ、でも……」 「もう俺も吸血鬼なんだから、噛んで血をたくさん吸ったって同じじゃない? 零が血を吸うことで落ち着くなら、いくらでも吸ってよ」  ね? と笑いかけてくる千弥に僕は言葉にならない感謝の想いが湧き、それは視界を潤ませた。 「ごめん、千弥……」 「謝らないで、零。悪い事じゃないんだから」 「でも、痛いよ?」 「零が気持ちよくなってくれるなら、俺の痛みなんて大したことじゃない」  どんな時も千弥は僕にやさしく甘く一身に愛してくれる。あふれてこぼれ落ちそうなほどの愛情に僕は目許を潤ませながらうなずき、彼の頬にキスをした。 「ありがと、千弥。ホントに、大好き」  囁いた言葉に千弥がうなずき、僕は頬から舌を這わせながら首筋までの輪郭をなぞる。やがて行き着いた真新しい噛み痕の残る首筋に、僕は再び牙を立てた。
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