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「名前、聞いてもいいですか?」
しばらく沈黙の後、達也も緊張したように尋ねてきた。
「えっと、隈部 和泉です。
大隈重信の隈に、部活の部に、平和の和と、泉です」
「へぇ、俺の名字とおそろいだね。俺は泉野だけど」
少し二人の間の緊張が緩む。
達也の雰囲気は、柔らかくて温かい。
「あ、ちょっと待って。もしかして未成年?
俺、車に乗せたけど、本当に何にもしないから!」
チラリと横目で和泉のことを見た達也は、再び視線を前に戻しながら慌てている。
何度も何もしないと誓う達也の様子が、誠実さを物語っていて、真面目な人なんだろうと和泉は口元に安心の笑みを浮かべた。
「大丈夫です。十九歳なので、もう成人です」
「え? 十九歳って未成年じゃん」
「いえ、あの、もう十八から一応成人ってことになってます。
お酒やたばこはニ十歳からですけど」
「えー? そうなんだっけ? いつから?」
「何年か前から……」
「俺、最近のニュースに疎いんだよなぁ」
しっかりしてそうな年齢なのに、思わぬ天然ぶりに和泉は少し笑った。
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