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 和泉(いずみ)と同級生の愛心(らぶ)は自動車製造の会社に就職し、彼女のことを「愛している」という鎖で縛りつけている。  若い母親に育てられた愛心(らぶ)は、大嫌いな名に反して子どもの頃から愛情を受けることが少なく、母の彼氏が来るときはアパートの外で待つように追い出され、菓子パン一つ与えられて一人きりで過ごす夜も多かった。  同じ高校で二人は出会い、愛心(らぶ)の方から告白して付き合いはじめる。  和泉の可愛らしい顔と優しい性格は、男子に人気があったが、愛心(らぶ)は他の男と喋ることを禁じた。  地味な服を着るように押し付け、女子同士で遊びに行ってもどこに行くのか、いつ帰るのか報告を()いている。  和泉の穏やかで慈悲深い性格に惹かれて、大事にしようと思っているのに、時々カッとなってひどい暴言を浴びせたり、冷たく無視してしまう。  頼んでも何も願いを叶えてくれなかった母とは逆に、何でも言う事を聞いてくれる和泉。  自分より優れている和泉が、言いなりになる瞬間は征服欲が満たされる。  しかしそれと同時に、母が言うように『愛心(らぶ)なんて、いなきゃよかったのに』と見捨てられる時が来るのではないかとの、底知れない不安感が襲った。  その事が愛心(らぶ)(いら)つかせ、自分に対する愛情を計りたくなってしまうのだった。  
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