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「あ、ごめん、また大丈夫って聞いちゃった」
近くで顔を見ると、人の良さそうな柔らかい微笑みをたたえている男性に、和泉も少しずつ自分を取り戻す。
アクのないスッキリとした顔立ちに、センターパートに分けた前髪は眉にかかるくらいの長さで、白いポロシャツと紺のスキニージーンズは好青年な印象を受ける。
三十歳くらいだろうかと和泉は推察した。
「車に水があるから、それで洗いましょうか」
車の方へ戻って大きなペットボトルの水を抱えてきた男性は、ゆっくりと和泉の傷ついた部分に水をかけてくれる。
少し沁みたが和泉は腕と手、ズボンをまくりあげて擦り剥けた膝も洗った。
「このタオルも使ってないから」
「すみません、ありがとうございます。
あ、でも血が付いちゃう」
ビニール袋に入った白いタオルを差し出されて、和泉はまだ少しだけ出血している腕を拭くのにためらった。
「いいよ、もう使わないものだから」
笑顔でそう言われて、和泉はもう一度丁寧にお礼を言いながらタオルで濡れたところを拭き、しばらくタオルで出血している腕を押さえる。
「それで、こんな夜中に女の子が一人でどうしたんですか?」
車から絆創膏も出してきた男性は、少し笑顔を困惑したような表情に変えて聞いた。
「あ……えっと……」
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