きみが呼ぶ

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───夢を操るのは簡単だった。 もともと予知夢を見るような体質だからだろうか。思っていた以上に自由が効いて、スムーズに星を消す予行練習みたいなものができた。 それを通して分かったのは、星を消すと、その消した人物の存在事消えてしまうということ。 記憶だけじゃなく、俺に関わって変化したものすべてが、”最初から俺が関わらなかった形"に帰化すること。 簡単に言えば、俺が例えばどこかの建物に放火したとしても、 俺が消えた後はすっかり元通りになるということだ。 こんなに都合の良い話はない。 存在を懸けて地球を救うんだからこんぐらいは許してくれ、なんて心の中で謝意を表しながら、 実はうたた寝しているスミにキスをしたことがある。 すごい柔らかかった。びっくりした。もうそれしか言葉は出てこなかった。 「……セナ?」 「っえ、スミ、起きて……?」 「んー?んん……サバ飯……」 ……俺のキスはサバ飯味だったらしい。 安堵しながら、どこかがっかりもしながら、俺は再び寝始めたスミの頬をそっと親指で撫ぜてみた。 安心しきった、いつも以上にあどけない寝顔。 愛おしくて、好きだなって、もうそればっかこみ上げて来て、 ずっとこうやって穏やかに爆睡してほしいと思った。 ねえ、スミ、俺はね。 きみの居ない世界を、 そんな世界のために君が犠牲になる未来を、 どうしても受け入れたくなかったんだよ。 『死ぬっていうか、無くなる。星の存在を消すのに、自分も巻き込まれるっていうのかな』 『えっ、命がけじゃん!絶対やだ』 そうきみが言った時、俺は心底安心した。 けれどそれと同時に、馬鹿みたいに泣いてしまいそうになって、 だから必死に、いつも通りに笑って見せた。 地球のために命を懸けたくないはずのきみが、 俺を守るためなら『大丈夫』と微笑んで、犠牲になれてしまうんだと。 「セナ……」 ……こんな風に、もう、名前を呼んでもらえないのは、 正直かなり、つらいけど。 でも俺は、きみが紡ぐその響きだけでもう、 十分すぎるくらいに生まれた意味を持てたんだよ。 そんなこと言ったら、大げさだって笑うかもしれないけどさ。 「……スミ」
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